富士山BC    3776m 山梨・静岡県        百名山
      

2016年5月12日(木)

 前回の立山をもってシーズンアウトしたつもりだったが、余りに快適な滑りだったためについ欲が出てしまった。二匹目のドジョウを狙い、仕舞いかけたギアを引っ張り出し今度こそシーズン最後を飾るべく、日本の最高峰、富士山を滑ることにした。

 富士山は標高が高いだけに春スキーでは気温が最重要ファクター。東京が最高気温25℃以上の夏日であれば上部の雪も適度に緩み、恐怖の滑り台を体験させられる憂き目に遭うことは無い。日頃良い行いをした覚えは無いのに、この日は東京で28℃、それに快晴、風も穏やかと又とない気象条件に恵まれ、本来釣れるはずの無い二匹目のドジョウが見事ゲットできたのだった。


駐車場からの眺め


 早朝5時前に須走り登山口に到着。過去富士山の北面と南面の滑降は経験済なので、今回初めて東面にチャレンジ。このため須走り口を起点としたのだ。

 5時20分、板とブーツを背にしてハイクアップをスタートする。雪不足で歩行区間が長くなりそうなので足回りは登山靴だ。事前情報によれば、先週時点で砂走りには標高2400m辺りまで雪渓が下りてきているとのこと。この情報を頼りに砂礫で足元が不安定な下山道を大汗かきながら登っていく。ところが標高2500mを過ぎても散発的な雪だまりしか現れない。どうやら前日の雨で雪解けが一気に進んでしまったらしい。


            登山道は厳重に封鎖                    管理されていないので倒木など荒れ気味



            荒れた砂走を登る                         ロープ内は荒れ放題で意味をなしていない


 六合目で登るには全く不適の下山道に見切りをつけ、荒れた道をトラバースして一般登山道へと転進する。これで格段に歩き易くなると期待したがそう甘くは無かった。こちらも土砂崩れによるものか、ガイドロープが広範囲になぎ倒されるなどしてかなり荒れている。山開きまでにかなり手を入れないといけないようだ。


切れ切れの雪渓 左手の雪渓が繋がっていれば2400mまで降りられた



         ガイドロープはなぎ倒されている                          案内標識も倒壊


 標高2900mの七合目まで来ると雪は完全に山頂までつながった。早速シール登行にモードチェンジ。板とブーツを下ろして背の荷物は軽くなったが、酸素が薄くなってきたので辛いことに変わりない。ザラメにシールは良く効いてくれるものの、所々まだ表面が硬い部分があるのでクトーも装着しておく。


ここからシール登行開始


 数えきれない程キックターンを繰り返し、ジグザグ登行する。夏富士は狭い登山道に蟻の行列だが、この季節、広大な雪原のどこを歩いても自由。遥か上方には、須走りルートからの登山者一人が先行していたが、本八合目からは吉田ルートから合流してきた登山者が点々とゴマ粒のように見えている。おそらくこの連中だろう、九合目付近まで来たところで吉田大沢を覗き込むと数名のスキーヤーがシュプールを描きながら滑り降りて行くのが遠望できた。


どこを歩いても自由



山中湖を振り返る



八合目



いかにもおいしそうな東斜面



吉田大沢を滑降するスキーヤー達


 次第に増してきた斜度にもめげず、しつこくシール登行を続け、11時35分に山頂到着。久須志神社前に立った。幸いなことに、このところ3000m級の北アルプスに足繁く通っていたことが奏功したのか、いつも悩まされる平衡感覚異常とか極度の眠気など高山病らしき症状は全く感じられない。


久須志神社の前はスケートリンク



不思議な紋様の剣が峰


 手早くランチを済ませたら早速お楽しみタイム。正午きっかり、須走り口下山道と記された石碑から滑降開始。まずはトラバース気味に東側に広がる大斜面に向かって行く。眼下には面ツルの広大な斜面。その裾野には勾玉の形をした山中湖と緑一色の北富士演習場という富士山ならではの構図。何といってもこの比類なき高度感が素晴らしい。


須走り下山道 ここから滑降



岩の間を縫ってトラバース



広大なバーンを独り占め


 いざ滑り出すと申し分のないスーパーザラメにスキーが良く走る。私好みの斜度に加え上部には落石も無いので思い切り飛ばせる。何とも気分爽快。生きてて良かった。早々と板納めしなくて良かった。万感を胸に独り占めの広大なスロープをどんどん落ちていく。

 縦に走る岩稜帯まで滑り降りたところで一旦停止、ここで進路を決めねばならない。岩稜の左は先ほどシール登行を開始した七合目小屋方面、右に行けば砂走り下山道だ。上から眺める限り、後者の方がやや下まで伸びているようなので舵を右に切った。


正面の岩稜帯の右側を降りた


 次第に多くなった落石に注意しながら滑り降りて行くと、標高3000m付近で二人組のボーダーと出会った。彼等も私同様、雪が繋がっていることを期待して下山道を登ってきた由。崩れやすい砂礫に随分と泣かされたとのことだ。


ボーダー二人とすれ違う


 2950mまで降りたところで一旦雪が途切れたのでスキーを外して次の雪渓へと移動する。しばらく滑って再び雪切れとなるが、ほんの2mほどだったのでスキーを履いたまま3番目の雪渓へ。結局標高2830mまで降りたところで完全に雪が無くなった。本日のスキーはこれにて終了。


そろそろ雪切れ近し



ここはスキーを外して渡り、、、



しつこく滑って終了


 ここで再び登山靴に履き替え、板とブーツを背に下山を始める。この時期の雪渓と同様、雪解けの水が流れるせいか、深い縦溝だらけで歩き難いことこの上ない砂走を黙々と下って行く。

 午後2時5分に駐車場に帰着。標高差900m程しか滑れなかったが、中身の濃い滑降にとことん満足できたので今度こそ板納めとするつもり。満身創痍となった可哀想な板は来シーズンにまた活躍してもらうため、早速チューンアップに出すことにした。手元から離れればエンドレスの誘惑も断ち切れるし。。。


行動時間  8時間45分


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