3776m 静岡・山梨県 | |
2014年9月2日(火) 今年の夏はロードバイクにかまけて山歩きはすっかりご無沙汰だった。気がつけば北海道の二百名山遠征から早や1ヶ月半。そろそろ山のフィトンチッドに浸りに行こうと思うのだが、正直言って自信がない。昨年新調したLa Sportivaのブーツはどうにも足にフィットしてくれないし、ペダルばかり回していたので山を歩く筋肉がめっきり衰えているかも知れないからだ。 という訳で復帰第一戦は近くてお手軽、かつ過去何度も登ってお馴染みの富士山で軽く足慣らしする、、、つもりだったのだが、足腰の山離れ(老化?)は想定以上に進んでいて、情けないほど疲労困憊してしまった。そもそも日本で一番高い富士山で「足慣らし」をしようとする方がおこがましいのかも知れないが。 午前5時半に須走り5合目駐車場に到着。9月10日の閉山前だが、平日であればマイカー規制対象外なので五合目までアクセスできる。案内係に誘導された最上部の駐車場には、昨夜の雨で出来たと思われる大きな水溜りがあった。これだけ降れば、砂走りを下る際にうっとおしい砂埃が治まってくれるかも知れない。
早速身支度を開始。足回りは砂走りに備えてスパッツが必須のアイテム。肝心のブーツは毎度足爪の痛みに泣かされるLa Sportivaを見限り、使い込んだ先代のAcuをカムバックさせた。 午前6時、車を後にする。参道沿いの茶屋街を抜けて石畳の階段を登る。質素な鳥居をくぐると、いよいよ須走りルートの始まり。相前後してスタートしたうら若き単独女性と暫く一緒に歩く。残念ながらお洒落な山ガールとの即席パーティは長くは続かない。息切れし始めた私を尻目に、彼女は軽い足取りでどんどん先に行ってしまった。
しばらくして今度は若いお兄さんに追いつかれ、またもや置いていかれる。昨年同時期に同じコースを歩いた際には、他のハイカーを抜くことはあっても抜かれることはなかったのとは大違い。こんなはずではなかったともがいてみても足は空回りするばかり。 それでも暫くすると少しずつ調子が出てきた。足に潤滑油が回ってきたのを見計らってペースアップ。何人か追い抜いて、先ほどの山ガールには本六合目で追いつくことが出来た。しかし、これで「見栄の余力」をすっかり使いきってしまった。限界を迎えた足は遅々と動かず、彼女はあれよあれよと言う間に先を行き、再びその姿を見ることは無かった。
逝ってしまった足を労わりつつ、眼下に広がる富士山麓の雄大な眺望に癒されながら砂礫の道を黙々と登って行く。八合目まで来ると登山道はラッシュアワーを迎える。吉田口からのコースが合流するのと、御来光目当てに登頂したハイカーが続々と下山してくるからだ。
九合目を過ぎると足は鉛の重しでも付けたように重くなってきた。加えて軽い眩暈に襲われるようになった。昨年末、アコンカグアで敗退を余儀なくさせられた因縁の高山症状だ。疲労と眩暈で足元はさらに覚束なくなる。 ヘロヘロになって歩いていると、突如後方から怒涛の足音が聞こえてきた。Karateのロゴ入りの揃いのジャージを着た大勢の若者達だ。あっけにとられて見ている私の前を疾風のごとく通り過ぎ行った。体育会系若人のパワーはまさに圧巻。私も老いの一徹パワーを振り絞って山頂まで残りわずかな距離を頑張ろう。
9時55分、五合目からちょうど4時間かけて山頂到着。これほど消耗した山歩きは久しぶりだ。足に相当きているので平地を歩いても膝が言うことを聞かない。ロボットのように不自然にぎくしゃくしてしまう。 ベンチに座ってランチをとっていると、先ほどのKarate部隊がすぐ脇で全員集合して記念撮影を始めた。どうやらN大空手部の連中で、合宿の一環での富士登山らしい。 食後は疲れてはいたが恒例のお鉢めぐりをすることにする。足はがくがく、頭はくらくらなので、いつもは1時間半で済むところを2時間近くかけて一周。途中修験道者の吹き鳴らすホラ貝の音に少し元気をもらった。
お鉢めぐりを終えた後は、そのまま下山にかかる。ロードバイクで鍛えたはずの大腿四頭筋は全く当てにならない。ダブルストックを支えにしながら砂礫の道を下る。砂走りの下山道は岩混じりながら、膝を延ばして下ることができるので多少は太股の負担が軽くなり助かる。 濃い霧で視界は殆ど無いので眺望で気晴らしをすることもできない。ひたすら黙々と下るのみ。途中で外国人カップルのハイカーが一組を追い抜いた他は、出会う人もいない。山頂の喧騒が嘘のように静かな下山ルートだ。砂払い五合目でようやく一息。しかしここからがまだ長い。
午後2時、ボロボロの足を引きずって登山口に戻ってきた。ここで待ち構えていた揃いのジャージ姿のおじさん達に富士山保全協力金を支払う。使途不明だとか何かと批判の多い協力金だが、これだけお世話になっている富士山の環境保全にちゃんと役立ててもらえるならば異存はない。 駐車場へ向かう急坂に最後の汗を流して車に帰着。富士山は今回で12回目だが、今回はその中でも辛さの点から言えば最右翼。翌日はご多分にもれず、階段登降もままならないほど酷い筋肉痛に泣かされた。やはり山歩きの脚力は山でしか得られないというのは本当だ。これから週一、それが無理ならせめて月二のペースで山を歩かないといけないと思いを新たにしたのだった。 行動時間 8時間10分 |