2019年10月17日(木)
台風19号による災害通行止めが今なお各地の高速道路で続いている。特に、首都圏から南北、中央アルプスへと向かう、中央道や上信越道は一部区間の土砂崩れで軒並み通行できない状況。加えて八ヶ岳や南アルプスでは美濃戸口や広河原等、メジャーな登山口へ通じる林道もクローズとのこと。
日本各地で多くの方々が被災したり、お亡くなりになっている。そんな時に何を呑気に山歩きかと御叱りを受けそうだが、フィトンチッド中毒の私は家にじっとしては居られない。台風のダメージを免れた高速の一つは関越道。その沿線にある越後三山の盟主、越後駒ヶ岳の登山口、枝折峠へのアクセスは無事とのこと。これで行先は決まった。越駒には過去何度も訪れているが、いずれも積雪期。この際、雪化粧の無いすっぴんの越駒を初体験してみることとした。
シルバーラインの長いトンネルを抜けて、夜明け前にガスに包まれた枝折峠に着いた。驚いたことに駐車スペースはほぼ満車状態。道路沿いにはカメラを据えた三脚がズラリと林立している。後で知ったことだが、枝折峠は知る人ぞ知る国内屈指の雲海、滝雲の鑑賞スポットなのだそうな。
滝雲と御来光
空いたスペースを何とか確保し車を止め、手早く身支度を整えた。5時40分、ハイクアップ開始。登山道脇の見晴らしの良いビュースポットにも数多くのウオッチャーがカメラを抱えて日の出を待っていた。こうしたチャンスは滅多にない。期せずして居合わせることとなった私も足を止めて大自然の織り成すショーを見学することにした。
この日はたまたま雲海や滝雲の生成に適した気象条件だったようだ。流れ落ちる滝雲と荘厳な日の出のコラボをじっくり鑑賞することが出来た。すっかり陽が高くなったところでショーは一段落。再びストックを手にハイクアップを再開する。
モルゲンロートに染まる越駒
どうやら登山者は完全にマイノリティのようだ。標高を少し上げただけで、あれほどいたウオッチャーは滝雲のように雲散霧消、静かな一人旅となった。
明神峠まで急坂が続くが、その後は細かなアップダウンを繰り返しながら、最初のマイルストーン、道行山へと向かって行く。道行山のピークは登山道から外れているのでパス。紅葉黄葉に見とれながら歩いているうちに次のマイルストーン、小倉山が近づいてくる。スキーでは山頂を踏まずにトラバースするが、夏道は頂きを忠実に越えた。
雲海上の荒沢岳
紅葉に染まる道行山
小倉山を越える
百草ノ池を過ぎると、前駒へ登り上げる急登となる。ここはスキーのシール登行でも息が上がり辛いところだ。途中若い単独二人に抜かれたが、最大心拍数の低い年寄りに無理は禁物と、対抗心を抑えマイペース堅持に努めた。
前駒への登り
滝ハナ沢にかかる雲海
駒ノ小屋への登り
駒の小屋直下は前駒に輪をかけた急登。岩場を手足をフル稼働させて登って行く。以前、この胸を突くような急斜面をシールで登り上げたことがある。どうしてそんな真似が出来たのだろうか、雪の無い急斜面を前にすると不可能としか思えないから不思議だ。
駒ノ小屋
駒の小屋から山頂まではもう一息。8時55分、二年ぶりの頂に立った。枝折峠から滝雲鑑賞のロスタイムを含めても3時間15分。スキーでは石抱橋から少なくともこの倍の時間を要していた。無雪期であればこんなに短時間で頂きに立てる山だったのだ。
山頂へ
八海山
天気は今一つ。お日様は広がった薄雲の中に姿を隠し、中ノ岳の山頂にかかった雲もとれない。それでも八海山を初め、越後の名峰をじっくり眺めることが出来たので十分に満足だ。
ランチを済ませたら下山開始。この頃になると登ってくる何組ものハイカーと行き交うようになった。往路を単にトラックバックするのは少々単調で退屈だがとても文句は言えない。アプローチすら叶わないアルプスや八ヶ岳など中部山岳に代わって山歩きの機会を与えてくれた有難い山域なのだから。しかも壮大な滝雲ショーというおまけ付きで。
行動時間 6時間20分
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