越後駒ケ岳  新潟県 2003m   百名山
   
  
 

2010516

つい先日の天城山ハイキングには大いに失望したので口直しに今週末は「山らしい山」をめざすことにした。選んだ先は上越の越後駒ヶ岳。事前にネットやガイドブックで情報を仕入れるが、5月中旬頃の雪や登山路の状況が今ひとつ良くわからない。当初、水無川からの登山コースを考えていたが、残雪期の記録が見当たらない上、山と高原地図には雪渓通過に危険マークがついている。と言うわけで無難に多くの方が起点にしている駒の湯山荘からのルートをとることにした。

通い慣れた深夜の関越自動車道をひた走り、夜明けとともに駒の湯近くに車を停めた。広いとは言えない駐車スペースにはすでに3台の車がある。510分に登山開始。




駐車スペースから見た越後駒ケ岳

吊橋を渡るとすぐに登山道となる。いきなりの急登でウオーミングアップの暇もない。沢音を聞きながらぐんぐんと高度を稼ぐ。残雪がすぐに現れるが、登山道には殆ど雪が無いので歩きやすい。栗の木の頭まで一気に上がると痩せた尾根道の緩やかな登りとなる。眩しいほどの新緑と登山路脇の可憐な花たちに癒されながらひたすら足を前に出す。駒ヶ岳が右手に聳えているが、厳冬期さながらに真っ白であり、新緑や高山植物との異色のコラボになっている。




イワウチワやカタクリの群生

前方に小倉山が展望できるようになるとまた急登が始まる。しばらくすると動物の群れが一斉に駆け出すようなドドドッという音がした。頭を上げると目の前の登山道直下にある小沢の残雪が崩れている。およそ直径2〜3mほどの無数の雪塊が眼下の小倉沢へ向けて勢いよく落ちていく。初めて目撃したブロック雪崩の破壊力は強烈だった。先日高妻山で沢山のデブリや、なぎ倒された樹木を見たが、まだ雪崩が落ちきっていない時期にそんな危険地帯を呑気にウロウロしていたのかと今更ながら空恐ろしくなった。今日もこの先どんなリスクが待ち構えているのかと不安になる。鎖場を過ぎると一気に雪山らしくなってきた。新雪で覆われた開けた尾根の急登になったが、先行者のステップがあるので歩きやすい。そろそろ足が重くなってきたが、ひと頑張りで小倉山に着いた。



                         小倉山から、まだまだ先は長い

凛々しい荒沢岳




 ここまでで約1000m登ってきたが、まだ700mの高度差をこなさなくてはならない。頂上ではちょうど下ってきた男女の二人組みとすれ違う。駒の小屋に泊まったのであろうか。小倉山から少し下ったところでアイゼンを付けた。これほどの雪は想定していなかったため、持参したのは6本歯の簡易アイゼン。殆ど気休めにしかならないが、無いよりはましだろう。見上げる駒ヶ岳は完全に雪に覆われて真っ白である。とても残雪期の5月中旬の山とは思えない。トレースも先行者一人とカップルの2名で作られたものだけ。周囲の山々も冬山の装いである。



これって残雪期の山?



中ノ岳

天気も申し分ない。この時期にこれほどの雪山の大景観をエンジョイできるとは思ってもいなかった。素晴らしい眺望に恵まれて鼻歌でも出そうな緩やかな登りは、頂上が近づくにつれて辛い急坂となる。しかもグズグズの雪は頼りなく足場が簡単に崩れる。気温は高く無風、雪の照り返しもあって汗が吹き出る。急な雪面を越えると、ようやく駒の小屋である。休まずにそのまま頂上へと向かう。頂上直下で下山してくる2人に会ったが腐った深い雪に苦労しているようだ。一人は小屋番の方らしい。940分に頂上に立った。




駒の小屋への最後の登り



越後駒ケ岳頂上





中岳方面



 最も存在感があるのは、目の前に聳える八海山、実際の標高以上に大きく見える。北東方面に立派な山並みが見える。おそらく浅草岳か。中ノ岳の方に目を転じるとその後方には巻機山、谷川岳、至仏山など群馬県境の山々が見えている(らしい)。実際の山々と地図と見比べたが確信をもって同定できなかったので帰宅後カシミールのカシバードで確認した結果である。仮想から現実を再認識するのもおかしいが。しばらく頂に滞在した後、下山を開始する。雪質はスリップには程遠いが、念のためストックをピッケルに持ち換えた。深い雪に足をとられ歩き辛い。駒の小屋まで降りたところでもう一人の登山者と話しこんでいたオヤジさんから情報を仕入れる。この雪は2日前に降ったもので積雪量は40cmだったらしい。前日の土曜日に入山していたらラッセルが大変だったかも知れない。日曜日としたことで冬に逆戻りした素晴らしい景観をタイミングよく味わうことができた。

 お二人に挨拶して下山を継続する。小屋の直下の斜度のきつい雪面は足場がどんどん崩れちょっと怖い思いをした。しかし次第にこの腐った雪質にも慣れてきた。踵に思い切り体重を乗せ、飛び跳ねるようなキックステップでガンガンと下る。何パーティが続々と登ってくるが、皆さん揃って辛そうな表情。やはり標高差
1700mは楽じゃないと言うことか。急坂の下りは下りで膝に厳しいが、目標達成後の気楽さがある。それに素晴らしい景色。新緑と残雪のコンビネーションが紫外線の増加とともに朝方よりも一段と鮮やかになっている。疲れはしたものの、新緑に身も心も洗われ気分爽快、登山口には予定よりもやや早く、1240分に帰着することが出来た。越後三山はとても魅力のある山、是非再訪してゆっくり歩いてみたい。




新緑の合間から駒ケ岳

行動時間           7時間30
歩行時間           6時間50
参考タイム        12時間25分(山と高原地図による。甘すぎ?)


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