大菩薩嶺  山梨県 2057m    百名山
 

  
 

201019

大菩薩嶺は今まで登った百名山28座とは一味違う、おかしな山だ。山頂の展望が優れているわけでもないし、表示も無いので気がつかず通り過ぎても不思議ではない。かく言う私がそうだった。最高点よりも100mほど標高の低い峠の方が圧倒的な知名度を誇っている。古くは青梅街道の難所として知られ、明治以降は中里介山の長編小説や赤軍派大量逮捕で有名になった峠だそうである。ではハイキング対象の山として見た場合はどうだろうか。ネットの投稿を眺めると平凡でつまらない山との評価も多いようだ。私としては、この峠からの眺める南アルプスや奥多摩方面の展望は第一級なのでお気に入りのリストに入れても好いと思うのだが。

自宅を朝4時に発って中央高速を勝沼ICで降りて国道411号へと進む。昨日は雪が降ったようで道路が薄く冠雪している。高度を上げるにつれて路面が凍結し危険な状況になってきた。車を降りて見ると完全にアイスバーン状態だ。車を路肩に停めて滑り止めを装着する。間もなく裂石に到着、3連休初日ということもあって既に3台の車が停まっている。車の温度計がマイナス4度を指しているが、今日は穏やかな晴天に恵まれそうだ。身支度を整え早速出発した。時刻は725分。

 ピークハントの最短コースは上日川峠から福ちゃん荘経由、唐松尾根だが、それでは物足りないので、今回は裂石の登山口から丸川峠経由、大菩薩嶺、大菩薩峠へと歩くことにした。歩きだしてしばらくは傾斜も緩かったが、次第に登りがきつくなり滑るようになってきたので
6本歯の簡易アイゼンを履く。これでペースが一気に上がった。単独の男性、若い二人の登山者を次々に追い越してからは、先行者のフットプリントが無くなった。正確に言うと実は先に歩いているものがいた。様々な動物たち。一直線の踏み跡はきつね、Y字状はうさぎ、蹄の跡がはっきり残る鹿、またはカモシカ、こうした動物たちが道案内をしてくれていた。




 丸川峠からはずっと日陰の道なので、雪はよく締まっている。3時間ほどで大菩薩嶺に着くが山頂を示す表示が見当たらないし、樹林に遮られて展望もないのでノンストップで通り過ぎてしまった。この先にある雷岩でパノラマが一気に開けた。南アルプスが屏風絵になっている。あまり雪の付いていない甲斐駒ケ岳、仙丈岳、北岳、間ノ岳等々から赤石岳、聖岳など南アルプス、オールスターのオンパレード。それと真っ白な富士山が素晴らしい。





 ここから唐松尾根を下ることも出来るが、せっかくなので大菩薩峠に向けて歩く。見晴らしの良い尾根道だが、風に雪がとばされて石交じりになっているのでアイゼンの爪が引っ掛かり歩きづらい。捻挫しないよう慎重に進む。

この辺りから続々とハイカーとすれ違うようになった。避難小屋を過ぎてしばらく下ると大菩薩峠の介山荘が見えてきた。小説家の名前を借りた山小屋は日本ではここだけではないか。峠から南アルプス、かろうじて見える八ヶ岳、間近に見える奥多摩方面の山々に別れを告げて下山を開始する。登山路には車の轍がついているので登山は終わったかのように錯覚したが、実は裂石の登山口との標高差は1000m近くある。単調な道を下り続け、富士見山荘、その先の福ちゃん荘を過ぎて上日川峠に到着。ハイカーで込み合うロッジ長兵衛の前にベンチで軽く昼食を摂ってもう一下り。雪と枯葉のミックスが靴底に張り付き歩きづらい。雪を落とすため踵を石に打ち付けながら歩き、登山口には午後1時半に帰着した。



行動時間         6時間5
歩行時間           5時間30分

 


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