別山BC    2874m 富山県        
      

2019年5月11日(土)

 山スキーを始めて間もない頃、実は今でもそうなのだが、急斜面を滑る技術も度胸も無いので、せいぜい中級レベルのスロープと景色が楽しめるロケーションというのが私の選択基準だった。諸先達の山行記録に目を通すと、そんな条件にぴったり合致しそうなのが残雪期の真砂沢。6年前に一度チャレンジしたものの、天候不良で敗退を余儀なくさせられ、それ以来天候や優先度の点でリトライのチャンスに恵まれなかった。

 そんな真砂沢、今シーズンのフィナーレに相応しい最高の天気の下、相棒Kさんのガイドよろしきを得て積年の宿題にようやくピリオドを打つことが出来た。

 今回は送迎サービス無し。Kさんとは扇沢で待ち合わせ、新装なった電動バスで室堂へと向かった。9時20分、板を担いで大勢の観光客でごった返す室堂を後にする。


大賑わいの室堂



称名川源頭へ



立山を振り返る


 室堂山荘の左手から称名川源頭へドロップ。後は緩々と流し、半時間ほどで雷鳥平に到着した。ここから別山まで標高差600mを越えるハイクアップだ。標高の高いスタート地点は、標高差の点では足には優しいが、酸素が薄い分、心肺に対してはその逆となる。

 余談ながら、酸素摂取量は心拍数とはリニアな比例関係にある。最大心拍数はお馴染み「220-年齢」のフォーミュラが示す通り、歳と共に減少の一途。つまり歳をとればとる程、摂取できる酸素量は減ってくる。一方、登山など持続系スポーツでは最大心拍数よりも「燃費効率が最大となる巡航速度」が維持できる心拍数をどうコントロールするかが重要ポイント。

 巡航速度=有酸素運動と考えられるので、心拍数を最大心拍数の70%〜80%に抑える必要がある。私の年齢では、心拍数110といったところ。ちなみに、ジムのトレッドミルで運動強度を変えて色々試してみると、荒い息をつくようになるのは、心拍数が130を越えた時ということが分かった。この辺りが有酸素運動の限界点ということだろう。

 このように自己流ながら呼吸から心拍数を推し量る方法を実践。出来るだけ息が乱れないように年齢相応のペース(<心拍数110)に抑えてハイクアップすることを心掛けている。


雷鳥沢の左の尾根をハイクアップ



至る所シュプールだらけで残念



雷鳥平を俯瞰



雷鳥沢と言われるだけある 繁殖期の雷鳥が縄張り争いなのか活発に活動 


 閑話休題。ザラメにシールが良く噛んでくれるのでクトーに頼ることも無く快適に登高を続け、11時35分、本日のお宿、剣御前小舎に着いた。但しここは単なる通過点。別山へは夏道が露出しているので、シートラーゲンで行く。


別山を目指す



別山への道



真砂岳西側には雪がついていない



剣岳と剣沢 この辺りから剣沢にドロップするシュプールあり



ここにも雷鳥 剣岳をバックに


 12時40分、別山の頂に立った。圧巻の迫力で聳える剣岳の大展望台だ。しかし、標高差1000mの登り返しが待っているため、ゆっくりは出来ない。早速滑走モードにしてドロップポイントへと向かう。


別山山頂から真砂沢上部を観察 思ったより斜度があった


 メローな真砂沢は標高2600m以下について言えること。山頂直下はいずこも同じ、急斜面だ。まず切り込み隊長のKさんがドロップイン。急斜面をもろともせず、最大傾斜を小回りで滑り降りて行った。

 次は私、急斜面を嫌い、稜線下をトラバース気味にコルの方へ移動し、少し斜度が緩んだところから滑り始めた。最初は数日前の新雪が重い箇所もあったが、すぐにザラメへと変わり ターンも思うがままの快適な滑りを楽しむことが出来た。


コル方向へトラバースする私



そこから滑降スタート



高度感も十分



広大な真砂沢の中では単なる黒いシミ



やっとKさんのところまで降りてきた私



Kさん



同上



同上




 しかし標高が下がるにつれ、重い雪となり、その分足に負担がかかるようになった。休み休み滑り降りたが、それでもやはりスキーは早い。山頂から40分もかからずに剣沢出合いまで降りてきた。


どこまでも続く滑降



広いのでデブリは沢中央部まで届かない



そろそろ剣沢との出合い



剣沢出合い 正面は前剣



剣沢出合いから真砂沢を振り返る 扇状に狭くなっている


 「お楽しみファースト」の後に待っているのは1000mの登り返し。しかし辛いばかりではない。大脱走ルンゼ滑降など若かりしき頃のKさんの武勇伝を拝聴しながら、長次郎谷や平蔵谷といった剣岳に纏わる山岳史を彩る雪渓を眺める楽しみもあるのだ。


剣沢を登る 先行者のトレースが一本



源次郎尾根



長次郎谷はデブリだらけ 右岸にシュプールがあった



平蔵谷もデブリランド



やっと剣沢小屋を越えた


 話はまた脱線してしまうが、興味深いことに富山文化圏では谷は「たん」と発音するらしい。ちなみに関東では「や」、関西では「たに」と読む例が圧倒的だそうな。この際、渋谷を「しぶたん」、四谷を「よったん」と読んでみるのも可愛らしくて一興かも。


大分影が長くなった頃、剣御前小舎に帰り着いた



 延々と続く沢の登り返しも、多くのシュプールが交錯しだすと愈々終盤。夕食時間に間に合うかヤキモキしながら登り続け、5時15分、無事本日のねぐら剣御前小舎に帰着した。6年越しの宿題をクリアできた上、良く歩き、良く滑り大満足の一日となった。


行動時間  7時間55分


Gear Dynafit Cho Oyu / Scarpa F1 Tr


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