芦別岳  1726m 北海道    二百名山  
 

2015710(金)

 暑寒別岳を終えた後は、握る手をストックからハンドルに換えて増毛から富良野へ約140Kmのドライブ。富良野近郊まで来たところで、ふと目にした案内に誘われ、ラベンダーファームに立ち寄った。高山植物も良いが人工的に手入れされ、紫に染まったお花畑も中々のものだ。それにしても、中国人観光客の多さには今さらながらびっくり。

 宿に着き、まず向かったのは風呂。二日分の汗を流してようやく人心地がついた。夕食後は、翌日の支度をしてすぐに布団にもぐりこむ。
5秒後には爆睡状態に。

 翌午前
3時起床。まだ夜が明けやらぬ中、眠い目をこすりながら登山口のある太陽の里へと向かう。芦別岳にある登山ルートは旧道と新道の二つ。事前にネットで記録をチェックすると、景色が良いのは圧倒的に前者だそうな。しかし長く険しく相当にタフなコースらしい。

 山と高原地図の標準
CTによれば、山頂まで9時間20分とある。成程これでは10人に一人しか旧道を選ばないと言われる訳だ。それだけの苦労に見合う価値があるかどうか分からないが、空を見上げれば雲一つ無い大晴天。遠路はるばる来たことでもあるし、覚悟を決めて旧道を登ることにした。下山路は言うまでもなくイージーな新道だ。


       キャンプ場を近道しようとして失敗            獣害防止柵のゲートを通過


 車を新道登山口に近い駐車スペースにとめ、
410分に出発。旧道へショートカットするつもりで、キャンプ場内を横切る試みは見事失敗。用水路に阻まれ、急がば回れを地で行ってしまった。

 本来の道に戻り真っすぐな林道を登っていくと、やがて獣害防止柵が現れた。ゲートにぐるぐる巻きにされたチェーンを外し、獣の生息地へ入りこむ。さらにその少し先の林道終点にある登山ポストで入山届に記帳し、遠征
3日目の山歩きがスタート。


               高く巻いて                  沢床に降りるの繰り返し


 ユーフレ沢沿いに付けられた登山道は急坂、激下りの連続。高巻きの都度、かなりのアップダウンを強いられるので、のっけから大汗をかかされる。それにしても、明らかにそれとわかる熊の落し物が幾つもあるのが気になる。まだ湯気の立っていそうなフレッシュなものを見つけた時は、思わず周囲をうかがってしまった。

 沢のせせらぎ音で熊鈴の音がかき消されるため、お互い予期せぬご対面が心配だ。敢えてこのコースを選択するような物好きが少ないので、羆も安心して人の通り道をトイレ代わりにしているのだろう。ちなみにここまで出会ったのは休憩中の単独と二人パーティの
3人だけという寂しさ。


            沢をつめて行くと                 景勝の滝もあり



三段の滝


 途中何の表示も無い分岐があったりしてちょっとまごつくが、ピンクのテープを信じて進んでいくと、やがてユーフレ小屋との分岐に出た。ここから登山道は北尾根を目指して沢から離れて行く。アキレス腱と脹脛が伸びきったままの激坂だ。


           ユーフレ小屋との分岐              笹漕ぎを強いられることも 


 しばらくすると
2連の熊鈴を盛大に鳴らしながら青年が追いついてきた。私より少なくとも二回りは若かそうな地元の方で、えらく足が速い。彼に熊の落し物の話をすると、最初のものは二日前でまだ若い熊のもの、それ以外の三つは今朝デリバリーされたばかりで成獣のものだそう。

 彼が先行してくれるので心強い。思わぬ熊避けの神の出現に秘かに安堵する。急登が一段落すると、左手には迫力満点のツインピークが聳えている。地図にある夫婦岩だ。


               夫婦岩                    稜線間近



           熊避けの神に先行して頂く            大雪の山並みが見えて来た


 稜線に登り上げるとようやく槍ケ岳の穂先にも似た芦別岳の鋭いピークが目に入ってきた。近いように見えるが、尾根は益々痩せてきてきついアップダウンやキレット等もあって中々一筋縄ではいかない。歩きだしてから既に
6時間近くを経過し、疲労感もある。そんな中、救いと癒しはミヤマキンバイやチングルマ等、待ち構えていたかのように現れる見事なお花畑だ。


まだ長い芦別岳への道程



            中々近くならないし、               近づくほどに険しくなる



          越えて来た険しい痩せ尾根            最後のピーク越え 



             可憐な花に癒される


 急峻な稜線からまったりした尾根へと地形が変化すると、いよいよ山頂は目前。踏み跡を忠実に追っているつもりが、いつの間にか山頂直下の急な岩場を登らさる羽目になったが、何はともあれ
1030分、夕張山系の最高峰、芦別岳の頂きに立つことができた。


           最後の一登りで、                  山頂到着


 この山は北海道の重心と聞いたことがあるが、まさに言い得て妙。大雪山系、日高山脈等の山々はもとより、前日に登った暑寒別岳も一望のもとだ。昨夏登頂したものの、天候不良であまり景観に恵まれなかった夕張岳も目の前に聳えている。


富良野の市街地のバックに大雪から十勝の山並み



奥の山が夕張岳



新道を下る


 山頂には
30分ほど滞在。新道から続々と登ってくる老若男女のハイカーに席を譲って下山することにした。新道は旧道に比べると、はるかに歩き易く快適だが、景観は今一つパッとしない。景色を見たければ旧道からというのは本当だった。


       新道から見上げる山頂はいまいち            旧道の山並みを振り返る


 エネルギー消費の少ない下り道だが、照りつける真昼の太陽は強烈でじっとしていても汗が噴き出すほどだ。ペースダウンし、ゆっくり歩を運ぶ。

 ユーフレ小屋への分岐がある鴬谷を過ぎた辺りで手持ちの
2リットルの飲料は底をついてしまった。こうなるといつも頭に過るのは、キンキンに冷えたビールをグビッとやるのど越しの感触なのだ。ともかく頭は空にして邪念を排除、足元だけに神経を集中し、黙々と下り続ける。

 午後
25分、完全に棒と化した足を引きずって旧道登山口に無事帰着。これで前日の暑寒別岳に続き、今回2座目の二百名山を目出度くクリアできた。


行動時間  9時間55


追記

 帰宅後に翌日(711日)の芦別岳の登山記録をチェックすると、10mの至近距離で熊との遭遇が報告されていた。私は能天気に歩いていたが、知らぬが仏、危ういニアミスをしていたのかも知れない。


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