朝日岳   富山・新潟県 2418m          
 

2019年10月9日(水)

 百名山と百高山の登頂を終えたところで、「何とか名山」制覇のモチベーションは糸がぷっつり切れてしまったらしい。残り30座となった二百名山は櫛形山を最後に遅々として進まない。モチベーションが低下した名山制覇とは別に、最近意欲的に目標にしているのは南北アルプスの未踏縦走路繋ぎ。こちらの方は継ぎ接ぎながら未踏区間が少しずつ解消されつつある。

 北アルプスで残された主なミッシングリンクは龍王岳と薬師岳間、西穂と焼岳間、それと朝日岳から日本海までの栂海新道の三つ。特にこの三番目は歩行距離が長く、有人の山小屋が無いことから最もハードルが高い。古希を迎え体力に衰えを感じる昨今、難易度の高い順にクリアしていかないと「あの世」まで宿題を持ち越してしまいそうだ。

 ベースとなる朝日小屋の小屋締めは10月13日、しかも、超大型台風19号の来襲は12日。こうした制約の中で、予報によれば9日と10日は晴天とのこと。このピンポイントのチャンスを逃すわけにはいかない。

 日付が変わる時刻に自宅を出発。午前5時過ぎに親不知観光ホテルの無料駐車場に車を乗り入れた。6時に予約してあった黒東タクシーに乗り込み一路北又小屋へと向かう。料金は朝日町からの千円の助成金を含め13000円と決して安くはないが、朝日小屋への最短アプローチで、かつ下山予定地点に車を置いておくにはこの方法しかない。

 車一台がやっとの幅員でハザードだらけの林道の先に辿り着いた北又小屋前には、地元富山の団体さんと別のタクシーで先行した女性が二人。こうした方々とほぼ同時に小屋を後にした。時刻は7時ちょうど。


北又小屋 地元富山の皆さん


 北又谷の橋を渡るとすぐに地図からも予想した通りの急登が始まる。女性パーティを追い抜いてからは一人旅。一合目、二合目と早いタイミングで高度を上げていく。朝日岳が10合目のはずは無く案の定、この合目表記の終点は標高1791mのイブリ山だった。


北又谷に架かる橋



北又小屋が眼下に


早いペースで合目が繰り上がると思ったら、、、



イブリ山が終点だった


  ここで漸く地獄の急登から解放され、天国の地を行くようになる。足元は延々と続く木道。青空の下、紅葉に彩られた山々の展望が広がり、とても気持ちの良いところだ。右手方向には毛勝三山の背後には剣岳が凛々しく聳えている。草原地帯には地塘が点在、草紅葉も美しいが百花繚乱の初夏はさぞかし見事だろう。


紅葉も始まっていた


剣岳と毛勝三山



イブリ山を振り返る



朝日岳が間近に


草紅葉も終盤



癒しの景色


 11時50分、一か月ぶりの朝日小屋到着。小屋前には作業員の方々が忙しく立ち働いていた。ガラス窓を厳重に板で覆うなど冬支度に余念がない。


一ヵ月ぶりの朝日小屋



前回拝めなかった雪倉岳と白馬岳


 有り余る時間は、雄大な景色を眺めたり、同宿者とのおしゃべりで時間潰し。もちろん片手にはビール。中には黒部の関電竪坑ツアーのガイドの方々もいて、色々と興味深いお話を伺うことが出来た。なかでも御年73歳の方は、ガイドの傍ら剣岳を日帰りしたりと頗る元気で、同年代としてとても励みになった。夕食後は翌日のハードワークに備え早めに就寝。

 話は変わるが、朝一番、北又小屋をスタートしてすぐに追いついた女性パーティの一人から、熊鈴を止めて下さいと強い口調で求められた。熊鈴の音を耳障りな騒音として毛嫌いする人がいるのは知っていたが、面と向かってはっきり意思表示されたのは初めて。争いごとは好まないたちなので素直に鈴を仕舞ったものの、他人の熊遭遇リスクを高めることはどう考えているのだろうかと釈然としない思いもあった。事実、後の行程で落とし物や足跡を目にしており、熊の気配は濃厚だった。

 確かに山の静寂を破る熊鈴は、TPOを度外視した不適切な使用は控えるべき。しかし、常にハイカーが行き来する目抜き通りのような登山道や、太陽の高い時間帯ならいざ知らず、それとは真逆の状況下では身を守るための必要悪ではないだろうか。それに熊に1000回以上遭遇したという「山で熊に会う方法」の著者、米田氏によれば(人間には不快な)高音の熊鈴は笛などよりも熊には効果的とのこと。とは言え、他人に不快な思いをさせることは私の本意ではないので、これからは状況に応じてこまめな消音を励行しようと思いを新たにした次第。


行動時間 4時間50分


二日目へ



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