荒島岳  福井県 1523m   百名山  
  

2011429

 今回のゴールデンウィークは、近いようで遠く中々足が伸ばせない北陸の名山、荒島岳と笈ヶ岳へと向かう。天気予報によれば、初日の金曜日は曇り、二日目には晴れ間が出るとのこと。それにしても全国的に晴れマークがついているのに、北陸地方だけ天気が冴えないのはどうしてだろう。

 自宅を午前
1時過ぎに出発。中央高速は多くの車で込み合っていたが、渋滞するようなこともなく東海北陸自動車道へ乗り継いだ。ナビに導かれるままに高速を降りて一般道を走る。しかしここからが大変だった。ナビが選んだのは何故か県道127号線というマイナーな道。川沿いに車一台がやっと通れるような超がつくほど狭い道なのだ。加えてガードレールもない。ハンドルをちょっとでも誤れば川に真っ逆さまにダイブだ。対向車が来ないよう祈りながら進み、何とか国道158号線に入り一息ついた。

 その後は順調に何とか無事に勝原に到着。カドハラスキー場の入り口から入ってすぐのスペースに車をとめた。駐車しているのは、ほかには
2台だけ。ゴールデンウィークの百名山でもこんなことがあるのかなと疑問に思いつつ、身支度を整える。登山靴を履き、いよいよ車を後にするときになって上の駐車場にたくさんの車やバスがとまっているのに気が付いた。いつもながらそそっかしい。今さら車を移動するのも面倒なのでそのまま車を後にする。時刻は750分。

 上の駐車場に着くと、ちょうどバスで来た
20名くらいの団体さんが歩き始めた所でその後ろについてしまった。スキー場の斜面を団体さんと一緒に登る。しばらく同行させてもらったが、あまりにスローペース。失礼して先行させて頂いた。石ころだらけの道が終わると、リフトの残骸がころがる草地となる。ここに荒島岳登山口の道標があった。この先は赤土の泥だらけの道だ。滑らないよう足元に神経を集中させて登っていくと、年配のおばさんが一人で下山してきた。雪が多いので登頂をあきらめ、仲間とは別行動にした由。見事なブナの大木に囲まれた登山道、下草にはうつむき加減のイワウチワがそこかしこに可憐な花をつけている。明日の笈ヶ岳がハードになりそうなので体力温存のためと思ってペースを抑えていたのだが、後ろから来たオジサンに達にどんどん抜かれてしまった。やはりちょっとスローペース過ぎるのかも知れない、アドレナリンをもう少し出して自分のいつものペースに戻そう。次第に辺り一面残雪になってきた。


          上段の駐車場には沢山の車                       団体さんについて歩く



         リフトの残骸                    その脇にある登山口の道標


          一年ぶりのイワウチワ                         残雪が次第に現れてきた



 シャクナゲ平への登りは斜度が結構きつい。ここで先ほどの追い越して行ったオジサン達に追いついた。シャクナゲ平に着くと一段とガスが濃くなる。深いガスでここから先の方向がわからない。
GPSを参考に左に折れると鞍部へと下るトレースがあった。しばらく緩斜面が続くが、やがて急な雪の斜面をトラバース気味に登っていく。勾配はきついものの、雪面にはしっかりしたステップが刻んであるので不安はない。次第に風が出て来た。登山道に雪片が沢山落ちている。何だろうと思っていたら、強い風が吹くたびに木々についた霧氷が吹き飛ばされて霰のように降り注いでいるのだった。

 その頃から登山道は完全に雪道になった。急な斜面もあるが、キックステップが効くので大丈夫。一番傾斜のきつい雪面の直登ルートにはトラロープが下がっていた。荒島岳頂上には
1030分に立った。祠以外何もない実に愛想の無い頂上だ。それに濃いガスで展望は全く無し。まだ深い雪に覆われているのだが、雪が融けて露出した地面には新芽が見える。山頂にも着実に春がやってきているのだ。


         シャクナゲ平で休憩している登山者                     木々の霧氷が降り注ぐ



         これが風で落ちてくるのだ                       急な雪面にかけられたトラロープ



                山頂の祠                               その脇には「春」が



 展望も無いのですぐに下山することに。実は今回、足回りに不安がある。今まで履いていた靴が磨り減ったのと防水が効かなくなったので、靴を新調したのだ。デリケートというか癖の多い足で、新しい靴が始めからぴったり馴染んだ試しがない。これまでの歩行で既に右足の指先が痛むようになっている。2枚重ねにしていたソックスのうち薄手の一枚を脱いでみた。靴紐をきつく締め、アイゼンも履いて下山開始。トレースを無視して歩き易そうな斜面をどんどん下る。所々地面の露出した登山道ではアイゼンがひっかかり苦労する。シャクナゲ平に戻ると、ここには地元の高校生連中が大挙して登ってきていた。シャクナゲ平からさらに10分ほど下ると、先ほどの団体さんがガイドと何やら話し合っている。どうやらここから引き返すことに決めたらしい。せっかくここまで来て、もったいない気もするが、団体行動だと一番未熟な人を基準に判断せねばならないからだろうか。

 これまでの快適な残雪歩きから再び泥んこの登山道へ。転ぶと悲惨なことになるので足場を選んで慎重に下る。登山靴が足に合わないのか、足が靴に適応しないのか、両足とも指先が我慢できないほど痛くなってきた。紐をきつくしたり、緩めたりといろいろやってみるがどうもダメだ。足の痛みで集中力が途切れていたせいか、駐車場を真下に見下ろすところまで来たところでスリップ。とっさに手をついたところに鋭利な石があって左手の親指の付け根をかなり深く切ってしまった。血がぽたぽたと落ちる創傷。ものすごく痛い。もう安全圏だと、いつもはしている手袋を外していたのも不運だった。駐車場のトイレに駆け込みしばらく冷水で血を洗い流して消毒。明日の笈ヶ岳がちょっと心配になる。


ガスが晴れてすっきり見えるシャクナゲ平



周囲の山々



       花に癒されるいい季節になってきたと実感




 
午後1時に車に帰着。手の痛みで顔をしかめながら靴だけ履き替え、すぐに車を出した。山を振り返ると、この頃になってようやく青空が広がってきた。これから頂上に向かう人はラッキーだ。本日の宿、御前荘に着いた頃には一面の青空。文字通り真っ白になった白山の稜線がよく見える。ここの温泉は特に「創傷に効能あり」とのこと、不運のなかにも多少の幸運はあるものだ。

行動時間              5時間10
歩行時間              4時間50

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