阿弥陀岳    長野県 2805m       
      

20166月2日(木)

 若かりし頃、四季を通じて随分と歩いた八ヶ岳。しかし、どうした訳か阿弥陀岳周辺については余り記憶が無い。この空白地帯を埋めるため、美濃戸から御小屋尾根を登ってみようと思い立った。

 早速最近の記録をチェックすると、御小屋尾根よりもむしろ隣に並走する南稜や中央稜の方がずっと変化に富んで面白そうだ。地図には無いバリエーションルートながら、難易度も大したことは無なそうだし、美濃戸よりも阿弥陀岳へのアプローチが短くて日帰りがお手軽になることは有難い。

 午前
5時、起点となる舟山十字路に到着。平日にも関わらず、先着の車が2台。ちょうど入れ違いで同年輩の方が一人出発するところだった。コンビニ弁当でおなかを満たして540分、私も車を後にした。


            このゲートを越えていく                       駐車スペースは7〜8台くらい   


 南稜にアプローチする方法は二通りある。広河原、旭小屋を経由するオーソドックスな方法と、広河原沢沿いの林道を少し遡り北側の山腹から尾根に取り付く方法の二つ。先行された方は前者を選んだので、私は後者を試してみることにした。

 ゲートから凡そ
30分ほどの林道歩きで中央稜と南稜の分岐点に到着。直進すれば中央稜だ。ここを右折して涸れ沢を渡渉すると、いきなり九十九折れの急登が始まる。しかしこの激坂はほんの一過性。10分ほど汗をかいただけで稜線に出た。


               林道を登る                               中央稜との分岐



            涸れ沢を渡り激坂を登る                           稜線に着いた


 このまま尾根歩きになるはずが、賑やかにつけられたピンクリボンを追って行くうちに今度は激下り。おかしいと思いつつも、すぐに立ち止まらないのが私の悪い癖。すたすたと
50mほど下ってしまった。何とそこで先ほどのハイカー氏と鉢合わせ、これで明後日の方角に進んでいることがはっきりした。明瞭な踏み跡やマーキングが有りながら、何ともお粗末なルートミスをしてしまい、15分のタイムロスとは情けない。

 再び額に汗して登り返し、今度こそ正しき尾根道を進む。それにしても一般登山道と言っても不思議ではない立派な道が続いているのは驚きだ。キノコか何かの採取権でも管理しているのだろうか、尾根上のそこかしこに入山禁止の札や、境界改メの杭がまるで卒塔婆のように林立している。いずれにしてもそれだけこの山域に人が出入りしているということだろう。


             良く踏まれた道                            卒塔婆のような境界改めの杭



         植生が変化しフラットになると、、、                        立場山に到着


 歩き易くても景色も見えず単調な尾根道に少々飽きてきた頃、コンスタントに続いていた上り坂も一段落し、フラットな立場山に着いた。ここは木立に囲まれているので素通りし、その先の崩壊地、青ナギまで進むと視界を遮るものは何も無い。ここから眺める阿弥陀岳は、ゴジラの背のような岩稜を従え、実に堂々としている。権現岳も圧巻の迫力だ。


目指す阿弥陀岳 手前は青ナギ



権現岳方面を望む


 蟻地獄のような青ナギを過ぎると再び樹林帯となる。足元に神経を集中し夢中で登っているうちに、いつの間にかガスが周囲の景色を覆い始めていた。阿弥陀岳の姿はかき消され、辛うじて岩峰の下部が見えているだけだ。


           いつの間にかガスが、、、                      せっかくの景色を隠してしまった  


 
2540m辺りの小ピークで稜線は90度左に折れる。その少し手前で休憩していると、単独の若者が追いついてきた。聞けば南稜の後は北稜にもチャレンジし中央稜を下山するそうだ。彼とはその後も山頂まで相前後して進むことになる。

 幸いなことに岩峰が近づくにつれガスが晴れて視界が利くようになってきた。ストックを仕舞い、ヘルメットを被って準備完了。いざ岩稜へ。

 
P1P2ともに左から巻いて難なく通過。P3の基部を左にトラバースすると、いよいよ核心のガリーの直登だ。取り付き点には古いスリングがぶら下がり、ワイヤーも設置されていたのでルートは間違いない。問題は恐れていた通り、入り込んだ寒気の影響で岩溝の中心部を流れる水が凍結していること。ホールドは豊富にあるにも関わらず、ちょうど足を置きたい個所が凍り付いていたりするので始末に悪い。


                 P2?                               ガスが少し晴れてきた



龍が寝ているようなP3



           P3下部の草付きをトラバース                          結構な高度感



          ガリーは凍結していた!                           頼りないお助け紐


 凍結部分を避けて何とかスタンスを確保しつつ、慎重に登って行く。下から若者が登ってくるので絶対に浮石は落とせない。最後は棚田のように階段状になった草付きを登り切って
P3をクリア、張り詰めていた緊張も少し解けた。山頂はもう目前だ。


ガリーを登る若者



草付きへと抜けP3クリア


 P4
を巻き、さらに一登りで阿弥陀岳山頂に到着。時刻は1015分。実に8年ぶりの頂きだ。時間が許せば赤岳まで足を伸ばすことも考えていたが、少し前に痛めた股関節が悲鳴を上げている。今回は無理をせず、またの機会としておく。


山頂までもうひと頑張り



             P4を巻いて、、、                            阿弥陀岳山頂に立った



赤岳はまたいずれ



南稜を振り返る バックは権現岳


 ランチを摂った後はのんびり下山するだけだ。御小屋尾根を少し下ったところで中央稜が分岐する。激下りだが、ここも踏み跡がしっかりしているので一般登山道と何ら変わらない。左手に歩いてきた南稜、右手に御小屋尾根を眺めながらどんどん高度を下げて行く。


御小屋尾根を少し下る 素晴らしい高度感



中央稜全貌その1



中央稜全貌その2



         このタオルを見たら左折                         さもないとこの崖の上に出てしまう



新緑を愛でつつ下山


 樹林帯に入ってから踏み跡が不鮮明の箇所が有り右往左往する場面もあったが、総じて歩き易い道だった。標高
2000mを切る辺りから沢沿いの長い車道歩きとなる。目に沁みるような新緑を愛でながら、痛む股関節を庇いつつゆっくり下山した。

 ゲート帰着は午後
15分。驚いたことに車の台数は6台に増えていた。南稜は思っていた以上に人気のコースらしい。


行動時間  
7時間25



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