赤岳長野・山梨県 2899m      百名山   
 

2014年10月29日(水)

 若い頃、毎週のように八ヶ岳を歩いた時期がある。新宿駅23時55分発の夜行列車には随分とお世話になった。登山コースは片端から歩いたものだが、思い起こすと踏破した記憶の無い尾根ルートがある。八ヶ岳東面に位置する県界尾根と杣添尾根がそれだ。いずれも小海線側であり、駅からのアプローチが長くて不便なので敬遠していたのだと思う。

 ところで「杣」は何と読むのだろう。早速調べると「そま」と読むのだそうな。国語辞典によれば、「木を植え育てて木材をとる山」や「山から木材を切り出す人、又は切り出した木」を意味するのだとか。読みはともかく偏と旁が表す通りでえらく分かりやすい。

 今回、上の二つの尾根を結び、出発点に戻るため、車は通行止めの南八ヶ岳林道を利用してみた。長坂ICで高速を降りて、まだ夜の明けやらぬ八ヶ岳山麓に車を走らせる。

 JR最高点を過ぎて暫くすると舗装が切れてダート道になった。それも相当な悪路だ。車高の高くない私の車は時々腹を打ってしまうので、殆ど歩行速度の慎重運転を強いられる。ゲート開閉はセルフサービスの獣害防止柵を越えて間もなく県界尾根の登山口に着いた。笹が繁茂して登山道もろくに見えない。いかにもマイナーな登山口だ。もちろん他の車は一台も見当たらない。

              獣害防止のゲート                        朝日を浴びて防火線の切り開きを歩く    


 午前6時5分スタート。切り開かれた防火線を一直線に登っていく。笹をかき分けるようにして歩くので、もし朝露でもあれば下半身ずぶ濡れ間違い無し。

 防火線の頭を過ぎ、標高が2000mを越える辺りから眺望が得られるようになった。秩父や南アルプス、そしてその間には見事な円錐形を描く富士山の秀麗なお姿が覗く。北から眺める富士山は宝永火口の出っ張りが隠され、すっきりして実に美しい。


 小天狗を越えると樹間からいよいよ主役登場。左に大天狗、小天狗、右に横岳の岩峰群を従えて王者の貫録だ。いよいよ至近距離となった赤岳は壁のようにそそり立っている。ここから凡そ400mの標高差を一気に登り上げることになるのだ。


県界尾根の先には赤岳(影はカメラを構える私)


 鎖や梯子の連続する急斜面を攀じ登る。足元が凍結した個所もあったりするので気が抜けない。夢中で登っているうちに、遥か高みに仰ぎ見た赤岳展望荘がいつしか目の高さになり、しばらくして気がつけばもう眼下にある。


         鎖場には凍結した斜面もある                        赤岳展望荘がいつしか目の高さに


 9時20分、1年ぶりの赤岳山頂に立った。空は澄んだコバルトブルー。中部山岳は全て一望できると思えるほどの快晴だ。北アルプスに目をやれば既に白屏風状態。気になる御嶽山は、冠雪した頂きからまだ噴煙が上がっていた。


           1年ぶりの赤岳山頂                              噴煙を上げる御嶽山



            白銀の北アルプス                         権現岳の向こうには南アルプスの峰々


 山頂で軽く行動食を摂った後は横岳へと向かう。流石に八ヶ岳の主稜線、平日といえども多くのハイカーが行き交っている。山頂直下の激坂を慎重に下り、赤岳展望荘はスルー。そのまま横岳の岩峰群へと向かう。両側がすっぱりと切れ落ちており、中々スリリングな稜線歩きだ。


横岳へと向かう



 横岳主峰の奥ノ院は昨年登ったので今回は割愛。三叉峰からすぐに杣添尾根を下山することにする。県界尾根とは様子が異なり、急な岩場を下ることも無く気楽なものだ。稜線直下で三々五々登って来る中高年のハイカー数人とすれ違った。どうやら県界尾根よりもこちらの尾根の方がメジャーなのかも知れない。


              杣添尾根分岐               杣添尾根は県界尾根よりずっとマイルド


 樹林帯へ入ると山々の眺望とはお別れだ。尾根を一つ隔てただけなのに県界尾根とは植生が異なるのが不思議。県界尾根であれほど煩わしかった笹が、杣添尾根に全く見当たらないのはどうしてだろうか。

 休みなく下り続けること約1時間、次第に斜度を緩くなり小沢を渡ると公園のように整備された貯水池に出た。ここからは、車はおろか人も歩いていない静かな南八ヶ岳林道のぶらぶら歩き、、、と思っていたら、地図では気がつかない起伏があったりして意外に疲れる。さらに1時間以上黙々と林道を歩き続け、出発点に帰着した。駐車スペースには私の車だけ。どうやら今日この登山口を利用したのは私一人ということらしい。


行動時間  7時間50分

Map
 Track Weather  Map 
  トップ           自転車              山歩き 
inserted by FC2 system